
のら猫を保護した、のら猫のことで困っている、のら猫をこれから保護したい。
のら猫に関するたくさんのお困りごとがあると思います。
のら猫は日本中どこにでもいます。
そして猫には人を引き寄せてしまう力があります。
かわいいから、かわいそうだから、助けてあげたい。
猫を大切に思う誰もが猫を保護してしまう可能性があります。
しかし、保護した後の解決方法はさまざまで一様ではありません。
今ある問題と今後起こりうる問題を知ることが大切です。
問題を解決するための過程をあらかじめ考えておくことで、最短距離で進んでいくことがでます。
一緒に考えていきましょう。

解決方法がいくつかあり、必ずこれが正解というものはありません。
自分に合ったものを選択しましょう!
猫がどんな問題を引き起こすか?


猫が1匹いるだけなら問題になることはほとんどありません。
ところが猫が増えると、猫を好きな人と嫌いな人の間でトラブルが起こることが多いです。
最初は小さなトラブルで我慢していたが、頭数が増えることで大きなトラブルになります。
不妊手術をしないでエサやりを続けると猫の頭数は爆発的に増えます。
小さなトラブルを大きくしないことが大切です。
問題が大きくなることで、ご近所トラブル、嫌がらせ、猫の虐待が起こることがあります。
頭数をそれ以上増やさないためには、不妊手術(TNR)する、もしくは家の中に保護する必要があります。
メス猫が1匹いると平均4匹出産します。
栄養状態が良ければ、1年で2回は出産できるため鼠算式に増えてしまいます。
猫が増えることで問題が大きくなります。
猫が増えればそのぶん費用と労力がかかります。
つまり最初の1匹で繁殖を防げば、その後の労力を最小限にすることができます。


猫の状態を確認する


猫を保護した、もしくはこれから保護しようとするならまずは猫の状態をよく観察します。
猫の人慣れ具合や健康状態によって今後どのように対応するか変わります。
また誰かに相談するためにも猫の情報が必要です。
次のことをよく観察して下さい。
- 耳カットがあるか
- オスかメスか
- 不妊手術済みか
- 年齢(月齢)
- 健康状態
- 毛色や毛質
- 性格や人慣れ具合
耳カットがあるか
「耳カット」はのら猫の不妊手術と一緒にする目印です。
耳カットがあれば誰かが猫のお世話をしている可能性あります。




オスかメスか
メスの場合は冬季以外は妊娠している可能性もあります。
妊娠している場合の選択肢は主に2つです。
堕胎手術するか、出産させて仔猫を里親に出すことになります。
90%以上の方は堕胎手術を選びます。
出産させる場合は、仔猫が離乳するまで親子を自宅に保護しておく必要があります。
不妊手術済か
外で暮らすのら猫は、ほとんどの場合どこから来たのかわかりません。
すでに不妊手術済みのこともあります。
不妊手術済みの場合は2つの可能性があります。
- 不妊手術済みの飼い猫が迷い込んできた可能性。
- 誰かが耳カットなしでのら猫の不妊手術をした可能性。



オス猫は睾丸のあるなしで不妊手術済みが分かります。
しかしメス猫は判断が難しい場合が多く、麻酔下でお腹のキズを調べたり、実際にお腹を切って調べることもあります。
動物病院に相談しましょう。
年齢(月齢)
ペットショップと同じで、若い仔猫の方が譲渡しやすいです。
2〜5ヶ月くらいまでの健康な仔猫なら里親を見つけられる可能性は高いです。
1ヶ月未満の仔猫を保護した場合は哺乳が必要となります。
反対に大人の猫(成猫)の場合は譲渡までに時間がかかる可能性があります。


健康状態
詳しい健康状態については動物病院で確認してもらいましょう。
猫が痩せていたり脱水している場合はなるべく早く受診する必要があります。
毛づやが良く、食欲と元気があれば数日以内に受診すれば大丈夫です。
しかしノミやダニは猫だけでなく人をさして、かゆくなることがあります。
ホームセンターなどで買える駆虫薬は効果が低いので、早めに動物病院へかかることをおすすめします。



自宅に先住猫がいる場合は、ウイルスや寄生虫が感染してしまう可能性もあります。
かかりつけの病院と相談して安全に保護しましょう。


毛色や毛質
珍しい色や長毛は人の目につきやすく、譲渡しやすい場合があります。
人気のある毛色と毛質は次のようなものがあります。
- 長毛
- 半長毛
- グレー系色
- パステル系色
- 三毛
- 茶トラ
- 白猫
- 黒猫
- 垂れ耳(のら猫でも時々いる)
性格や人慣れ具合
大人しい性格で人に慣れている方が譲渡はしやすくなります。
仔猫の場合は最初は人に慣れていなくても、猫との接し方を工夫することによって人慣れをしていくことが多いです。


猫のその後の方針を決める!主に4つ


次に考えなくてはいけないことは、その猫の今後の方針です。
どのような方針にするか決まれば、なにをすればいいかが分かります。
反対に、方針が決まらないとなにをしていいか決まりません。
猫は自分で方針を選ぶことができません。
保護する人が猫の方針を決めて、その方針に合わせて必要な処置をしていきます。
猫のその後の方針は主に4つです。
- 飼い猫にする
- 譲渡する
- 不妊手術して外に戻す(TNR)
- 一時預かり先を探す



方針が決まっていない方からの電話やメール相談も多いです。
その場合は、主に4つの選択肢の中から方針を決めていただくようお願いしています。
方針が決まっていないと良いアドバイスができません。
飼い猫にする
のら猫を捕まえたらそのまま飼い猫として自宅で飼いたい人もいると思います。
ペットフード協会が発表している「全国犬猫飼育実態調査」よると猫の入手方法は「ペットショップ」約15%、「のら猫を拾った」約40%、「知人からもらった」約25%です。
多くの人がペットショップ以外から猫を迎えています
猫は外にたくさんいるので飼い始めることは簡単です。
しかし、猫を一生飼うとどのくらい費用がかかるか知っていますか?
猫は長生きだと20歳まで生きます。
生涯飼育にかかる費用は200万円以上にもなります。
お世話にかかる時間的負担や経済的負担は小さくありません。
猫を不妊手術せずに飼い始めると多頭飼育崩壊する危険があります。
中途半端な気持ちで飼い始めるなら、新しい飼い主を探したり、外でそのままお世話できるように不妊手術(TNR)する方が安全です。



猫は簡単に飼い始めることはできるけど、生涯飼い切るのはとても難しいことです。
のら猫を軽い気持ちで飼い始めるのはおすすめしません。
それでも猫を飼いたい方
猫を飼うことが決まったら、かかりつけ病院を見つける必要があります。
外で生きてきた猫は寄生虫やウイルス性の感染症があるかもしれません。
外部寄生虫の駆虫、ワクチン、感染症の検査、内部寄生虫の検査をしましょう。
その後生後半年以上であれば早めに不妊手術を受けましょう。


譲渡する
猫の譲渡活動とは新しい飼い主を探すことです。
しっかりと手順を踏んで譲渡活動を開始することで、早く里親を見つけやすくなります。
特に生後6ヶ月以下の仔猫の場合は月齢が若い方が里親を見つけやすいです。
保護してから時間が経つほど譲渡活動が難しくなります。
家の中で保護して譲渡先を探す
譲渡活動の始まりは猫を捕まえることです。
家の中で保護することで、新たに感染してしまうウイルスや寄生虫を防ぐことができます。
時々外でお世話をしながら譲渡活動をする人もいます。
しかし新たな感染の可能性があることや外の環境で猫の被毛が汚れているため、なかなか里親が見つからない場合が多いです。
なるべく家の中に入れて譲渡活動を始めて下さい。
譲渡する前に医療処置が必要
猫を保護したらまずは医療処置と検査が必要です。
外で暮らしてきた猫は、どのような寄生虫やウイルスを持っているかわかりません。
先住猫がいる場合は保護した猫と、すぐに接触させるのはやめましょう。
保護した猫にはまず次の処置が必要です。
譲渡会の参加条件や新しい里親が望む、処置や検査をする必要があります。
主に次のようなものがあります。
- 3種混合ワクチン
- 体表のノミダニ駆虫
- 体内の寄生虫駆虫
- 便検査(時間をあけて3回以上)
- 生後6ヶ月以上は不妊手術してから譲渡
- 猫エイズウイルスと猫白血病ウイルスの血液検査
里親の探し方
最低限の医療処置をしたら里親をなるべく早く探し始めます。
- 知人やご近所に声をかける
- ポスター(コンビニ、自治会の掲示板、スーパー)
- 里親サイト(ペットのおうち、いつでも里親募集中、ジモティー)
- 譲渡会
不妊手術して外に戻す(TNR)
「TNR」という言葉をはじめて聞く人も多いと思います。
TNRとは、「のら猫を捕獲するTrap」と「不妊手術するNeuter」と「元いた場所へ戻すReturn」の頭文字です。不妊手術と一緒に必ず 耳カットをします。
手術することで猫の一番大きな問題である繁殖力を抑えることができます。
飼い猫として家に入れたり、新しい飼い主を探す譲渡活動よりもハードルが低く、確実に効果が出る方法です。
1匹手術すれば確実に1匹分の繁殖を抑えることができます。



TNRはたくさんの猫を手術するほど効果があります。
しかし手術していない猫が残ってしまうと、そこから猫が増えてしまう可能性があります。
その地域の猫の70%以上をTNRすると猫の数が減り始めると考えられています。
さくらねこ
のら猫が不妊手術済みか見た目で判断することはとても難しいです。
そのため、不妊手術の時に耳先を小さくV字に切って目印にします。
耳カットをされた猫を「さくらねこ」とも呼びます。


耳カットはかなり重要です。
これがないと麻酔をかけて手術してあるか調べるしかありません。
耳カットは手術済み猫にだけある安心の目印です。
一時預かり先を探す
のら猫を引き取ってくれる保護団体やボランティアさんを見つけることは難しいです。
猫を保護した、またはこれから保護しようとする人が真っ先に考えてしまうのは、
「誰か預かってくれる人(引き取ってくれる人)を探そう。」
これです。
日本では1年間で2万匹の猫の殺処分があります。
行政と民間が精いっぱい努力して譲渡しても、間に合わずに2万匹です。
そして、外で知らないうちに命を落としている猫の数は数え切れません。
保護団体や個人保護ボランティアさんも譲渡のために努力していますが、かなり時間がかかります。
猫は日本中にたくさんいますので、すべてを保護することは不可能です。
猫を引き取ると、その猫が譲渡されずに生涯世話を続けなくてはいけないかもれません。
生涯にかかる費用は、病院の費用を多少節約したとしても100万円以上です。
猫を引き取ることは、かなりのリスクがあります。
そのリスクを簡単に引き受けてくれる保護団体やボランティアさんは多くはありません。
猫を引き取ってもらうことは基本的に難しいですが、自分で費用を負担しながら一時的に預かってもらうことはできるかもしれません。
一時預かりや預かってくれるかもしれない施設について説明します。
知り合い
自宅で保護できない場合は、まず知り合いに預かれる人がないか探してみます。
友人、親戚、ご近所さんなど探してみましょう。
自分の自宅でも保護できないか、もう一度考えてみましょう。
賃貸の場合でも大家さんと相談次第で、一時的に自宅で保護できる場合もあります。
保健所や動物愛護センター
保健所は犬や猫を引き取る施設だと考える人も多いです。
保健所に収容される動物が増えると、行き場のない動物の殺処分が増えます。
反対に収容数が減れば、殺処分数を減らすことができます。
現在、保健所では殺処分数を減らすために、簡単に猫を引き取ることはなくなりました。
ケガをしていたり、動けなくなっている猫は治療を目的に収容することはあります。
愛護動物である猫は、駆除目的での引き取りは拒否されます。
保健所や動物愛護センターが地元の保護団体と連携している場合があります。
問い合わせてみましょう。
引き取ってくれる保護団体や個人ボランティア
動物保護団体や個人ボランティアさんは、どこも手一杯です。
施設の空きができるとすぐに埋まるような状態です。
近隣の保護団体などに十件以上電話してみる覚悟が必要です。
引き取ってくれる保護団体が、猫を大切にしてくれるかよく調べてから預けるようにして下さい。
動物の管理がいい加減で、預けた直後から猫の状況がわからない場所もあります。
一時預かりボランティアを探す
一時預かりボランティアとは、猫を一時的に預かって猫が生活するための場所や、お世話する時間を提供するボランティアさんです。
猫を引き取るわけではありません。
つまり自宅で猫を保護できない人が、保護するための場所を提供してもらって、譲渡活動は猫を預けた人が行う必要があります。
猫を預かるためにかかる費用や医療費は、猫を預けた人が負担します。
お互いに提供できる場所や費用を負担し合うことで、譲渡活動を促進することができます。