不妊手術(TNR)する

T・N・R…?

のら猫のことを調べていたら、急に英語が出てきて難しくなった!

と思った方、もう少しだけ一緒に頑張りましょう。

TNRをすごく簡単に言うと、「のら猫を捕獲し、不妊手術して元の場所に戻す」ということです。

この記事では、TNRの仕組みやTNRの実際のやり方について説明していきます。

目次

TNRってなに?

TNRとは、「のら猫を捕獲するTrap」と「不妊手術するNeuter」と「元いた場所へ戻すReturn」の頭文字です。

不妊手術と一緒に必ず耳カットをします。

手術することで、猫の一番大きな問題である繁殖力を抑えることができます。

飼い猫として家に入れたり、新しい飼い主を探す譲渡活動よりもハードルが低く、確実に効果が出る方法です。

1匹手術すれば確実に1匹分の繁殖を抑えることができます。

猫は繁殖力が強く、不妊手術しないままエサを与えていると一気に頭数が増えてしまいます。

のら猫先生

猫は繁殖力が強く、のら猫は日本中のどこにでもいます。
すべての猫を保護して飼い主を探すことは不可能です。
TNRはのら猫の繁殖力を抑えて、殺処分やのら猫で起こるご近所トラブルを減らす方法です。

蛇口を閉める

http://human-animal.jp/about/tap-model

犬と猫の問題は「蛇口モデル」で簡単に説明できます。

犬と猫は、ペット産業(ペットショップやブリーダー)、飼い主(遺棄や保健所へ直接持ち込み)、のら猫の野外繁殖で保健所に持ち込まれます。

動物保護団体による引き出し(引き取り)や、保健所での譲渡活動によって殺処分を避けることができます。

しかし、引き出しや譲渡できる数には限界があります。

上の蛇口から出てくる量が多ければ、犬と猫は殺処分されます。

まずは蛇口を閉めることがとても大切です。

TNRは蛇口を閉める重要な方法で、国や自治体も推奨しています。

TNRのメリットとデメリット

TNRはのら猫を増やさないための方法ですが、他にも様々なメリットがあります。

そして少ないですが、デメリットもあります。

ひとつずつ紹介していきます。

TNRのメリット

  • ご近所トラブルが減る
  • 仔猫が生まれなくなる
  • 猫同士のケンカが減る
  • マーキングが減る
  • 発情期の鳴き声が減る

ご近所トラブルが減る

不妊手術すれば、それ以上猫の頭数は増えません。

猫の頭数が増えなければ、ご近所トラブルが起こる可能性は低くなります。

また、後述する猫の習性がなくなることによってもトラブルを減らすことができます。

仔猫が生まれなくなる

猫は1回の出産で4匹程度の仔猫を産みます。

飢餓や感染症などで生まれた仔猫の7割が、生後半年までに命を落としてしまうと言われています。

出産時は見えない場所に隠れているため、気づかないところでたくさんの仔猫が命を落としている可能性があります。

不妊手術することで、仔猫の出産と死亡をゼロにすることができます。

猫同士のケンカが減る

特に不妊手術をしていないオスはテリトリーの意識がとても強く、ケンカを繰り返します。

体や顔が傷だらけになり、時には死んでしまうこともあります。

不妊手術をすると穏やかになり、オス同士が仲良くなることが多いです。

オス猫は手術しなくてもいいと考える人もいますが、猫のためにも手術しましょう。

マーキングが減る

オスはテリトリーを守るためにマーキング行動をします。

匂いの強い尿を自分のテリトリー内のいたるところに吹きかけます。

手術をしていないオス猫の尿の匂いは強烈です。

匂いがご近所トラブルの原因になることもあります。

不妊手術をすると、マーキング行動が減り、尿の匂いも減ります。

発情期の鳴き声が減る

発情期の猫の鳴き方は独特で、人間の子どもの泣き声のように聞こえます。

猫の発情はとても情熱的で、交尾の時はオスがメスの首根っこにガブガブ咬みつきます。

猫の交尾はメスにとって痛いことなので、逃げないように咬みついて離さないようにしています。

結果として、猫の発情期は夜中に叫び声がします。

手術すると発情期の鳴き声はなくなります。

TNRのデメリット

  • 他の地域からの猫の流入
  • 希少動物を捕食する可能性

他の地域からの猫の流入

のら猫はそれぞれテリトリーをもって過ごしています。

不妊手術をするとテリトリーの意識が下がり、猫同士仲良くなることが多いです。

しかし、新参猫を自分のテリトリーから追い出すことが減り、新しい猫がやってくる可能性が増えます。

エサをあげるときは置きエサはせずに、毎日同じ時間にエサを与え、食べ終わったら早めにお皿を下げましょう。

そうすることで、エサを求めてやってくる猫の流入を減らすことができます。

希少動物を捕食する可能性

猫はハンターとして優秀で、単独でたくさんの鳥や小動物を捕食することができます。

TNRしても猫の捕食能力は減らすことはできません。

エサが少なければ、希少動物を捕食してしまうことがあります。

世界の国々では、希少動物を守るためにTNRではなく猫の殺処分を行う地域もあります。

猫の数を増えないようにして、エサの管理をすれば、小動物を襲う可能性は低くなります。

耳カットとさくらねこ

のら猫は触ることができないことが多いため、見た目だけでは不妊手術をしたかわかりません。

そのため、のら猫の不妊手術では一緒に耳先を少しだけ切って目印にします。

これを「耳カット」と呼びます。

耳カットは不妊手術をするときにはすごく重要になります。

耳カットがある猫を「さくらねこ」と呼びます。

耳カットがさくらの花びらに見えるためそう呼ばれています。

呼びやすいネーミングで全国に広まりつつあります。

TNRする前に準備すること

猫の情報収集

まずは捕獲したい猫の情報収集が必要です。

猫が定着してるところにはエサを与えている人がいます。

エサを与えているから「エサやりさん」と呼ばれています。

猫に聞いてもなにも分からないので、エサやりさんや猫がいる場所の近隣住民から情報を集めます。

ひとつずつ説明していきます。

  • 不妊手術済みか
  • 猫がいる時間帯
  • エサやりさんはいるか

不妊手術済みか

のら猫でも不妊手術済みの場合もあります。

耳カットがあれば不妊手術済みの可能性が高いです。

しかし猫同士のケンカで耳先が少し欠けている場合があります。

その場合は耳先の写真を撮って、詳しいボランティアさんか動物病院へ相談しましょう。

耳カットがなくても手術済みのこともあります。

以前は飼い猫で手術済みだったけど外に出だしていたら迷子になった場合、のら猫だけど耳カットしないで不妊手術した場合があります。

猫は栄養状態が良ければ年に2回くらいは出産します。

出産経験があるか、仔猫を連れてきたことがあるか、聞き込みして確認しましょう。

猫がいる時間帯

猫はテリトリーを動き回ります。

定期的に巡回していることが多いので、猫がよくいる時間帯を確認します。

数日に1回しかあらわれない猫もいます。

その場合は別の場所でエサをもらっている可能性が高いです。

エサやりさんはいるか

猫が定着している場所にはエサを与えている人がいます。

エサを与えている時間帯を確認します。

昼間にエサのお皿だけが残っている場合は、人目を避けて夜中にエサを与えていることがあります。

猫を捕獲する時には、エサを抜いてもらう必要があります。

頑張って確認しましょう。

他人の敷地で捕獲する場合、土地の所有者の方に許可を得ましょう。

のら猫先生

猫にエサを与えること自体が悪いことだと考える人がいます。
近隣の苦情でエサやりを急にやめてしまうと、ゴミをあさったり、エサ場を求めて猫が違う場所へ移ります。
エサやりをやめてしまうと、トラブルがさらに大きくなってしまうことがあります。
エサをあげることを責めるのではなく、協力して不妊手術をすることでトラブルを減らすことができます。

動物病院の探し方

野良猫の不妊手術をしてくれる病院を探し、予約します。

ネットなどで探したり、住む地域の保健所などに確認すると良いと思います。

Google検索のコツがあります。

県名、野良猫、不妊手術」

県名、野良猫、TNR」

などで検索すると見つかりやすいです。

市の名前など地域が狭すぎると見つかりにくいことがあります。

TNRやのら猫の診療を行う動物病院は数が限られているため、近隣では見つからない可能性があります。

車で1時間ほどはかかるつもりで探すと見つかりやすいと思います。

動物病院が見つかったら、なるべく早く手術の予約を入れます。

動物病院によっては手術の予定がずっと先まで埋まっていることがあります。

のら猫は予定通りに捕まらないこともあるため、捕まらなかった場合にキャンセル料がかからないかも念のため確認します。

費用負担を事前に決める

手術費用を誰が負担するか先に決めておきましょう。

エサをあげている人、寝床を与えている人、猫を可愛がっている人、手術をしたい人がいると思います。

手術が終わってから費用負担を考えるとトラブルの元になります。

手術をする前に、誰が負担するのか、どのように分担するのか、しっかりと決めましょう。

のら猫先生

のら猫の問題は住環境の問題でもあります。
猫が好きな人だけではなく、猫が苦手な人、猫を迷惑に感じている人にも声をかける事が大切です。
地域の問題として捉え、より多くの住民が関わる必要があります。

助成金制度を使う

手術費用は低価格の病院でも数千円はかかります。

頭数が多ければ数万円はします。

猫にケガや感染症があれば別途費用がかかる場合もあります。

費用の負担方法をいくつかご紹介します。

簡単にメリットとデメリットを説明します。

自分や周りの方で負担し合って、自己資金で手術するのが一番スピード感があります。

自治体や財団法人の助成金は発行までに時間がかかることが多いです。

助成金制度は予算がなくなれば終わってしまうため、時期によっては助成金がない場合もあります。

猫の妊娠期間は2ヶ月間と短いため、助成金を待っていたら出産して余計に費用がかかった、ということもあります。

頭数が1匹でメス猫で発情しやすい時期(1月から10月)なら、自己資金でなるべく早く手術することをおすすめします。

しかし、自治体が発行する助成金が利用できる場合は自己負担を減らすことができます。

各自治体助成金の検索方法は

「〇〇市 野良猫 飼い主のいない猫 不妊手術 助成金」

などのキーワードで見つかりやすいです。

見つからない場合は直接自治体へ問い合わせてみましょう。

公益財団法人が発行する無料チケットや助成金についてもリンクを貼ってあります。

自分に合ったものをご利用ください。

のら猫先生

助成金によっては、耳カットする前と後の写真が必要な場合があります。
また動物病院が発行する領収書の書き方や、申請書の書き方はそれぞれ異なります。
写真の撮り忘れが原因で、申請できなくなることもあります。
事前にしっかりと調べて準備しましょう。

捕獲器で猫を捕まえる

TNRのTの部分です。

捕獲器を使うと猫を安全に捕まえることができます。

しかし捕獲器を置いただけでは猫は捕まりません。

猫は頭が良く、見たことないものを警戒します。

捕獲器は扉が閉じる時に大きな音がするので、猫が驚いてしまいます。

一度失敗すると、猫が捕獲器を怖いものであると認識して近寄らなくなります。

なるべく最初の1回で確実に捕獲することが大切です。

捕獲器の詳しい使い方はこちらの記事を参考にして下さい。

のら猫先生

目的の猫を捕まえるのは難しいものです。
時として見知らぬ猫が捕まってしまうこともあります。
その場合は、耳カットの有無、首輪など飼い主の特定に関わるものの有無、近隣住民の情報を確認して下さい。
飼い主不定と判断できればTNRの対象です。
一度捕獲器に入った猫は二度と捕まらない可能性があります。
一度のチャンスを無駄にすることなく、地域全体の猫を減らす努力が必要です。

動物病院へ運ぶ

動物病院が指定した時間に猫を運びます。

動物病院によっては飼い犬や飼い猫との接触を避けるために、搬入の時間がかなり限られていることがあります。

動物病院への配慮もお願いします。

捕獲器にペットシーツが貼り付けてあれば、病院内を汚さないで済みます。

手術とワクチン接種

TNRのNの部分です。

ほとんどの猫にとっては最初で最後の医療処置になります。

3種混合ワクチンやノミ駆虫も検討をお願いします。

3種混合ワクチンを接種すると、パルボウイルス、ヘルペスウイルス、カリシウイルスが予防できます。

特にパルボウイルスの予防は大切です。

免疫がない猫が腸炎を起こして、嘔吐、下痢、脱水で死んでしまうこともあります。

一度のワクチン接種で高い効果が証明されています。

アメリカ合衆国のTNRプログラムでも3種混合ワクチンは標準となっています。

猫のワクチンは生ワクチンと不活化ワクチンがあります。

不活化ワクチンは最低2回接種しないといけないため、できれば生ワクチンが望ましいです。

また、白血病ウイルスのワクチンは不活化ワクチンのため、TNR時の接種は推奨されていません。

協力的な病院だと、TNR時のワクチン接種が通常より低価格のことがあります。

確認してみましょう。

ノミ駆虫をする薬も様々です。

ノミと一緒に回虫や条虫などの腸の中の寄生虫を同時に駆除できるものもあります。

ご希望の場合は動物病院へお問い合わせ下さい。

特に仔猫は免疫力が低く、腸内の寄生虫を持っていることが多いです。

のら猫先生

のら猫の不妊手術は手術前の血液検査やレントゲン検査を行わないことがほとんどです。
細菌やウイルスの感染、事故やケンカによるケガ、生まれつきの病気、高齢による病気など様々なリスクがあります。
これまでの経過もわからないことが多いです。
通常の飼い猫や飼い犬の手術よりもリスクが高いと理解した上で手術をお願いして下さい。
すべての猫を救うことはできませんが、少しでも飢餓や事故で苦しむ猫を減らすためにTNRが必要です。

猫のお迎え

動物病院から指定された時間にお迎えに行きます。

病院によって、手術当日の夕方のお返しの場合と手術の次の日のお返しの場合があります。

基本的に手術当日は外に放すことができません。

当日の夕方お返しの場合は、一晩だけ自宅で保管する必要があります。

連れて帰る時も猫がケージ内で動き回ることがあります。

猫を連れて帰る時は、ケージの鍵の閉め忘れがないかなど注意して確認しましょう。

病院から術後の説明を聞いてから猫を連れて帰ります。

確認すると安心な項目は次の通りです。

  • 術後いつ頃外へ放すことができるか
  • 抜糸は必要か
  • エリザベスカラーや術後服は必要か
  • 麻酔の副作用で嘔吐などの可能性
  • いつからご飯を与えていいか

のら猫のための手術であれば、抜糸やエリザベスカラーは必要ないことがほとんどです。

念のため確認しておきましょう。

術後の経過観察

猫の保管場所は雨風の入らない玄関先や物置場所が望ましいです。

特に冬は底冷えして体温が下がりやすくなります。

麻酔の影響で体温は多少下がっています。

捕獲器やケージの下にカイロを入れたり、上からタオルなどをかけて暖かく保ちます。

麻酔の影響で猫が嘔吐することもあります。

見ていてかわいそうですが、一晩は様子を見て大丈夫です。

次の日になっても吐いているようなら動物病院へ相談しましょう。

数時間おきにケージの中を確認して、呼吸をしているか、ペットシーツが汚れていないか、寒くて震えていないか確認します。

猫を放す

必ず捕獲した場所へ放す

TNRのRの部分です。

猫を外へ放す時は、必ず捕獲した元の場所に放します。

猫は生活していた場所でごはんをもらったり、テリトリーを作って生活しています。

別の場所へ急に連れて行かれたら生活ができなくなるかもしれません。

また、別の場所に放してしまうと、動物愛護法違反で罪に問われる可能性があります。

猫を捕獲した場所と別のところに放してはいけません。

猫の放し方

猫を放す前が、猫をしっかり観察できる最後のチャンスです。

麻酔でふらついていないか、出血がないか、嘔吐はしていないか、確認しましょう。

まだ意識がはっきりしていないようなら、もう半日待ったほうが安全です。

放す時間帯は、放した後の行き先がわかる日中の方が安心です。

捕獲器の扉をそっと開けると、走って逃げていくことが多いです。

手が猫の進行方向にあると引っかかれる可能性があるので気をつけて下さい。

猫はわき目もふらず逃げていきます。

走った先で交通事故にあわないように、交通量の少ない方向に捕獲器の扉を向けて逃してあげて下さい。

数日間は戻ってこないかも

猫は捕獲され手術されたショックで数日戻ってこないことが多いです。

エサを与えていた猫であれば、数日待てば帰ってきます。

ショックで少し遠くへ逃げたけどエサ場がなく戻ってきます。

エサはいままで通りの時間において下さい。

無事に戻ってきて、さくら猫としての新しい生活ができることを祈っています。

のら猫先生

捕獲した場所に戻すなと言われたら
猫に餌を与えている人がTNRに無理解だったり、猫を嫌いな人がいる場所もあります。
猫を元の場所に戻すなとか、保健所に連れて行けと言われる場合もあります。
そんなことはできないことを伝えましょう。
不妊去勢をして耳カットしている猫は誰かが管理しているという目印にもなります。
その場合、保健所は猫を引き取りません。
引き取り対象からも外れていると伝えれば、元いた場所に戻すことができます。

まとめ

TNRの基本的な流れを理解していただけたでしょうか?

わかりにくい部分があったり、こんな方法もあるよ、という方はお問い合わせからお知らせください。

記事の更新をさせていただきます。

TNRと簡単にいうけど、すごく難しくて人間と猫の知恵比べの連続です。

すんなり捕獲器に入ってくれる猫もいますが、中々入らないことも多いです。

その時重要なのは、焦らずひたすら待つ。

一度で上手くいかないこともあります。

その時は日をあけて再チャレンジする。

精神を鍛える修行かと思える現場もありますが、諦めなければ必ず成功します。

猫の繁殖力は犬と比べても並大抵ではありません。

猫が増えると、ご近所トラブル、虐待など様々な問題が増えます。

また、仔猫たちも過酷な環境では生き残ることは難しく、生まれた多くが亡くなってしまいます。

猫を今以上に増やさないことがとても重要です。

今いる猫たちを守るためにも。 猫と人が共生して行くためにも。 TNRは必要な手段です。

たくさんの人が猫の問題に気がついて、問題の解決方法を考えるようになればのら猫は確実に減ります。

猫に関わる人たちの意識が変わるためには時間がかかります。

猫の活動をあきらめず継続していくことで、少しずつ改善していくと思います。

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