ミルクボランティアについて

稲垣将治
獣医師
猫の問題を減らすために日々奮闘
2014年野良猫の不妊手術専門病院開業
2019年保護猫カフェさくら開業

ミルクボランティアって聞いたことはあるけど、どんなことをしているかよく知らない。

そんな人も多いと思います。

今回は、ミルクボランティアがどんなことをして、保護猫活動へ貢献しているか見ていきましょう。

目次

ミルクボランティアって?

生後直後~1ヶ月齢の赤ちゃん猫は、母猫の母乳を飲んで育ち、自力で排泄も体温調節もできません。

母猫と離れてしまった赤ちゃん猫には人の手による数時間おきの哺乳が必要です。

そのため、行政施設(保健所、動物指導センター)で育てるためには行政職員の人手が足りず、仔猫は殺処分の対象となることが多いです。

行政で殺処分される猫の60%以上は、幼い仔猫とされています。

そんな赤ちゃん猫を、母猫の代わりに育てるのがミルクボランティアです。

ミルクボランティアを広く募集する自治体も増えていて、行政職員の負担を減らしつつ仔猫の殺処分を減らしています。

ミルクボランティア制度の具体例

ミルクボランティア制度は広がってきていますので、お住まいの自治体で制度があるか、ネットで検索してみて下さい。

ここでは、越谷市と埼玉県のミルクボランティア制度について説明します。

越谷市保健所(埼玉県の中核市)、埼玉県動物指導センターではミルクボランティアを募集しています。

登録には条件があり、講習会もある

行政のミルクボランティアになるには、赤ちゃん猫(乳児猫)を育てた経験が必要です。

また、乳児猫を育てられる時間と環境が整っていることなど、条件を満たしている必要があります。

面接と自宅の確認(ペット可の住宅であること)を受ければ、誰でも登録できます。

埼玉県は講習会への参加が必要になります。

動物指導センターは駅から遠い場所にあることが多いため、車で搬送できると楽です。

用品の貸し出しがあることも

キャリーケースやペットヒーター、哺乳器やミルクなど、最低限必要な用品は貸出してくれます。

医療費はミルクボランティアの自己負担となります。

仔猫は体調を崩しやすく、医療費がかかることもあります。

時間的な余裕ももちろん必要ですが、経済的な余裕もある程度必要です。

アルバイト代が出たり、交通費の支給があるわけではありません。

しかし、猫の問題解決に直接関われる、他にはない機会です。

2ヶ月齢まで育てたら行政へ返す

自分で保護した仔猫は自分で里親探し・譲渡する必要がありますよね。

しかし、ミルクボランティアとして行政から引き受ける仔猫は、生後2ヶ月齢まで育てたら行政へ返します。

返した先の行政施設で里親を探してもらえます。

越谷市では申請すれば引き続き里親探しもできますが、埼玉県は基本的に返還になります。

ミルク飲みの間だけ育てて、里親探しはお任せできるので負担は少なくなります。

ミルクボランティア経験者さんからひと言

ミルクボランティアの経験者の方から、ひと言いただきました。

育てるのが大変な子もいますが、ほとんどはすくすくと成長してくれます。

ただし、過保護すぎるほどキメ細かく育てないと赤ちゃん猫の死亡率は上がります。

兄妹の頭数が多い場合、初心者ならひとりで抱えずに協力を仰ぐことも必要です。

ミルクを飲まなくてハラハラしたり、睡眠不足で寝落ちしてしまったり、大変なことも多いですが、

それも2〜3週間だけのこと。

手のひらに乗るほど小さいのに、生きるパワーにあふれた赤ちゃん猫の強さ、可愛さに感動しながら、

成長していく姿を見守れるのはとても幸せな時間だったりします。

今回の記事がミルクボランティアに挑戦してみようかな?と思うきっかけになれば嬉しいです。

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