僕は現在、動物病院と保護猫カフェを運営しています。
埼玉県にある、のら猫の不妊手術を専門に行う「いながき動物病院」を8年間、保護猫を譲渡するための施設「保護猫カフェさくら」を3年間運営しています。
保護猫カフェのボランティアスタッフからは、
「将来、保護猫カフェを自分で運営してみたい」
そんな声も、ちらほら耳にしています。
保護猫カフェの運営ってどうなっているのだろう?
開業にはどのくらいの時間と費用がかかるのか?
具体的な内容も、おいおい説明していきたいと思います。
まずは、保護猫カフェってなんだろう?という説明から始めていきます。
保護猫カフェってなに?
保護猫カフェがどのようなものか、知らない方もいると思います。
確かに、保護猫カフェに行ったことがない人にとっては、誤解を生みそうな言葉です。
猫を保護してくれるの?
カフェならご飯出るよね?
猫を保護する施設ではない
先に答えを言えば、保護した猫を譲渡するための施設です。
よくある質問は、
「猫を保護するための施設なんでしょ?」
う〜ん、近いようで遠いです。
日本では保健所や動物収容施設などに収容された動物のうち、年間2万匹の猫が殺処分されていて、年間20万匹以上が交通事故などで命を落としています。
現状、すべての猫を保護することは不可能です。
施設によっては保護依頼を受ける場合もありますが…
保護猫カフェによっては、保護の依頼を受けています。
しかし、のら猫は無数にいるので、施設で受け入れられる数は限られています。
軽い気持ちで保護猫カフェに保護の依頼をしないよう、お願いします。
カフェだけど軽食なし
ほとんどの保護猫カフェでは、飲食物の提供はありません。
飲み物も自動販売機やペットボトルの提供であることが多いです。
「カフェなのにコーヒー飲めないの?」
という質問も時々あります。
猫と触れ合える施設の呼び方として、「猫カフェ」や「保護猫カフェ」という名称が日本で浸透しています。
猫カフェと保護猫カフェの違いは?
近年の猫ブームで、猫カフェや保護猫カフェが増えました。
2つの違いはなんでしょうか?
似ているようで、全く違う性質の施設です。
猫カフェには純血種が多い
首都圏を中心にチェーン展開している猫カフェは、ペットショップが運営していることがあります。
たくさんの動物を販売していると、売れ残って大きくなってしまう猫もでてきます。
そういった猫が、ペットショップが運営している猫カフェに入る可能性は高いです。
そのため、普通の猫カフェにはアメショーやスコティッシュなどの純血種の猫が多くいます。
保護猫カフェは雑種がほとんど、猫の譲渡を推進
では保護猫カフェはどうでしょう。
保護猫カフェは保護された猫を譲渡する施設です。
元々はのら猫だったけれど、保護されて譲渡を目指していることが多いです。
つまりほとんどが雑種です。
まれに、純血種のような変わった毛色や長毛の猫もいますが、血統書がある場合はほとんどありません。
1匹の猫に新しい家族が見つかって譲渡されると、代わりに1匹新しい猫が入ってきます。
保護猫カフェによっては、猫の入れ替わりも多いです。
遊び盛りの猫がいることも多く、お客さんを楽しませてくれます。
その反対に保護猫カフェには、保護されてあまり時間が経っていないため、人馴れ訓練中の猫もいます。
まだ人が怖くて、思わずお客さんに猫パンチをしてしまったり、咬みついてしまうことなどがあります。
保護猫カフェで生活することで、スタッフやお客さんに時間をかけて慣らしてもらうと言う目的もあるので、あたたかな目で見守って欲しいです。
保護猫カフェには、元のら猫、多頭飼育崩壊現場、飼い主の飼育放棄、虐待など様々な過酷な現場から保護された猫達がいます。
辛い経験をした猫たちも多く、1匹ずつに保護に至るまでのドラマがあります。
そう言ったことも保護猫カフェの特徴です。
猫の性格や年齢はバラバラであることが多いです。
多頭飼育崩壊に関しては、下の記事を参考にして下さい。
保護猫カフェの目的
保護猫カフェは全国的に増えてきています。
それぞれ目指している目標に違いはあると思いますが、おおまかに3つ考えました。
- 保護猫の譲渡促進
- 啓発活動
- 保護猫活動のハードルを下げる
ひとつずつ説明していきます。
保護猫の譲渡促進
こちらは何度もお伝えしました。
保護された猫の譲渡を促進して、猫の殺処分を減らそうという全国的な取り組みです。
保護猫カフェ以外にも、譲渡会やインターネットの里親サイトなどでも猫の譲渡活動は行われています。
譲渡会の会場は、猫にとって不慣れな場所で緊張します。
譲渡会では小さなケージに入っているため、普段通りのかわいさを発揮できない可能性があります。
また、里親サイトでは実物の猫が見られないため、実際に猫に会える方が里親が決まりやすいです。
カフェの形態にもよりますが、保護猫カフェさくらでは実際に保護猫とおもちゃで遊んだり、抱っこしたり、膝に置いて撫でたり、ちゅーるをあげたり、リラックスした猫達と過ごすことができます。
このため里親さんが決まりやすいです。
啓発活動
「啓発」という言葉は少し難しく感じるかもしれません。
簡単に言えば、「猫のためにこんなことをしたら、社会がもっと良くなる、と伝えること」だと思います。
怖い猫と思っていた外猫出身の猫だけど、すごく遊び好きでかわいかった
猫に特別な関心はなかったけど、世の中には猫を取り巻く問題があることを知った
猫の問題を減らす方法について知って、自分も参加したいと思った
猫の問題についてみんなで考えていくだけでも、前進していると思います。
保護猫カフェは様々な相談を聞きながら、どうすればいいか一緒に考える場所だと思います。
しかし、猫を無責任に預ける場所ではないことは、繰り返しお伝えします。
保護猫活動のハードルを下げる
保護猫カフェが地域とつながりを持つことで、地域住民の相談を受けたり、解決方法を提案することができます。
保護猫カフェは閉鎖的にならずに、なるべく開かれた場所であるべきだと思います。
猫の問題について知ってはいるけど、ひとりで活動を始めるのは難しいと考える人も多いです。
ひとりでのら猫の手術をしたり、譲渡活動を始めるのはとてもハードルが高く感じますよね?
地域住民が保護猫カフェにボランティア参加することで、保護猫活動のハードルを下げることができます。
保護猫活動に寄付をすることも大切ですが、それだけが支援ではありません。
猫のお世話をしたり、猫の送迎を手伝ったり、保護猫カフェで接客したり、週1回や月1回の参加でもできることがあると思います。
まとめ
今回は初歩の初歩、保護猫カフェって何だろう?というお話でした。
猫カフェと保護猫カフェは似ているようで、全然違います。
また、保護猫カフェの本来の目的を常に意識していないと、運営方針を間違ってしまうかもしれません。
保護猫カフェは地域に根付いているべきです。
ボランティア活動を通して地域住民と連携し、様々な相談を受けながら地域の役に立ち、結果として猫の問題を緩和する場所だと思います。
運営の実際の内容についても、記事を書いていきたいと思います。