三毛猫はほとんどがメスであることは有名です。
しかし、ごくごくまれに三毛猫のオスがいます。
50,000匹以上の猫と出会ってきた中で、たった2匹だけ三毛猫のオスがいました。
今回は、三毛猫はなぜほとんどがメスなのか、またどうして三毛猫のオスが生まれてくるのか、これについて説明します。
性染色体って?
性染色体って聞いたことありますか?
いきなり難しい話になってしまいますが、この言葉を理解せずに三毛猫を理解でません。
ちょっとだけ頑張りましょう!
遺伝子は、染色体というひものような塊の中に含まれています。
染色体の塊の数は動物種によって異なり、人46本、猫38本、犬78本です。
この染色体のうち性別を決めるのが、性染色体と呼ばれています。
動物の性別は、性染色体が2本組み合わさることによって決まります。
多くの哺乳類では、性染色体Xと性染色体Yを持っているとオス(XY)、性染色体Xと性染色体Xをもっているとメス(XX)になります。
性染色体の組み合わせがXYはオス、XXはメスだと覚えて下さい。
ここだけ重要です。
クラインフェルター症候群とターナー症候群
哺乳類が妊娠する時、父親(XY)からXとYのどちらかと、母親(XX)からXとXのどちからを、子供に与えます。
与えられた子供がXYをもらえばオス、XXをもらえばメスになります。
このように親から子供へ性染色体が伝わっていくことで、子供の性別が決まります。
しかし、正常に遺伝子が伝わらないことがあります。
クラインフェルター症候群は性染色体が1本多く、XXYです。
Yを持つため、クラインフェルター症候群はオスです。
ターナー症候群は性染色体が1本しかなく、Xです。
Yを持たないため、ターナー症候群はメスです。
オスになるために必要な性染色体Yには、個体の生命活動に必須の遺伝子は存在しないと考えられてきました。
つまり、動物が生きるために性染色体Yは必ずしも必要ないはずだと。
しかし、最近の研究では、老化などで血液細胞から性染色体Yが失われてくると心不全、アルツハイマー病、がんなどになりやすく、寿命も短くなることが報告されました。
女性よりも男性の方が短命であることの、原因にもなっているようです。
性染色体Xの遺伝子が茶色と黒色の毛色を決めている
性染色体は、ただ性別を決めているわけではありません。
性染色体には、さまざまな遺伝子情報があり、毛色を決めている場合もあります。
三毛猫は茶色、黒色、白色の毛色で3色毛色猫(三毛)となっています。
このうち茶色と黒色になる遺伝子が、性染色体Xの中にあります。
メスは性染色体XXを持ちますので、ひとつの性染色体Xに茶色、もうひとつの性染色体に黒色の遺伝子を同時に持つことができます。
オスは性染色体XYなので、茶色もしくは黒色の遺伝子しか持つことができません。
つまり、茶色と黒色の毛色をもつ猫はメスだけ、ということになります。
白色になる遺伝子は性染色体ではなく、別の染色体にあります。
これがあると、茶色、黒色、白色の三毛猫になります。
また、白色の遺伝子がない場合もあります。
その場合は、サビ猫という柄になりますが、三毛猫と同様にほとんどがメスです。
サビ猫は三毛猫と比べて人気があまりない柄ですが、よく見るととてもきれいでかわいいです。
三毛猫のクローンはキジ白だった!
今飼っている猫や犬がとても可愛くて、全く同じクローン動物が欲しくなる人がいるかもしれません。
しかし、クローン動物は性格や見た目が全く同じではないことがわかっています。
2001年に、世界初のクローン猫が誕生しました。
遺伝子を提供したドナーは三毛猫でしたが、生まれたのはキジ白猫でした。
全く同じ三毛猫の遺伝子を持っていても、遺伝子の働き方によって全く見た目の違う猫が生まれてしまうのです。
遺伝子って不思議です。
三毛猫のオスはクラインフェルター症候群だった!
これまで色々説明してきましたが、そろそろ終わりが見えてきました。
大変お疲れ様です。
結論、三毛猫のオスは性染色体を3つ持つクラインフェルター症候群であることがほとんどです。
つまり三毛猫のオスは性染色体XXYと3つも持っていて、その中のXXに茶色と黒色の毛色の遺伝子が含まれています。
また他の染色体に、白色の毛色の遺伝子を持っているのです。
クラインフェルター症候群(性染色体XXY)の猫は、数千匹に1匹の割合で生まれるとされています。
そして、性染色体XXYをもつ猫の中でも、茶色と黒色と白色の遺伝子を持っていて、なおかつすべての毛色の遺伝子が働いている必要があります。
気が遠くなるほどとても低い確率です。
三毛猫オスが珍しい理由がよくわかりますね。(笑)
動物病院で出会った猫が50,000匹以上いますが、そのうちの2匹だけが三毛猫のオスでした。
実際の数を見ても、非常に珍しいです。
よく言われるように、3万匹に1匹くらいの割合だと思います。
三毛猫のオスは繁殖力がないことが多い
クラインフェルター症候群は繁殖力が全くないか低いことが多いです。
男性ホルモンが少なく、精巣も小さいことが多いようです。
手術で来た猫は、それほど精巣が小さい印象はありませんでした。
もしかしたら繁殖能力がある三毛猫のオスだったんでしょうか。
三毛猫のオスは高値で売れる?
都市伝説のようなこの話。
血統証がある猫ならプレミアがついて、高値が付くことがあるようです。
しかし、雑種の三毛猫オスを捕まえて、高値で販売するのは難しいと思われます。
万が一、三毛猫のオスを捕まえた場合はちゃんと手術をして、TNR(手術して元の場所へ戻す)するか、保護して里親さんを探しましょう。
間違っても手術しないで、誰かに高値で売りつけようと思わないで下さいね。
これまで出会った2匹の三毛猫のオスは両方とものら猫で、手術して元の場所へ戻されました。
お連れになった方は、三毛猫のオスの珍しさには気づいておりませんでした。
「とても珍しい猫なので大切にお世話してあげてください。」とだけお伝えしました。
まとめ
三毛猫のオスはとっても珍しいです。
猫の毛色は多種多様で、僕は仕事をしながら猫の毛色を楽しんでいます。
三毛猫やサビ猫はほとんどがメスですが、茶色(茶トラ)猫はオスが多い印象です。
毛色によって猫の譲渡の可能性も左右され、きれいで珍しい毛色ほど譲渡の可能性が高くなるようです。
猫の里親になろうと考える時は、キジ猫や黒白猫など、ちょっとつまらない毛色の猫もぜひ選択肢にいれてあげてください。
人気の毛色は、他の誰かが里親になってくれるはずです。
万が一、三毛猫のオスならすぐに希望者が現れると思います。
譲渡会で見かけたことはありませんが‥。
今回は、三毛猫のオスの不思議について説明でした。
のら猫を見かけた時に、もしかしたら三毛猫のオスかな?と思っていただけると、少し楽しいかもしれません。