猫免疫不全ウイルス(猫エイズウイルス)に関する豆知識を紹介します。
この記事の中では、猫免疫不全ウイルス(FIV)に感染していて症状のない猫をFIVキャリア猫と呼びます。
FIVキャリア猫は発症するまでの時間が長く、発症していなければウイルスに感染していない猫と変わりません。
それにも関わらず敬遠され、譲渡が進みにくい現状があります。
FIVの正しい知識が、FIVキャリア猫の譲渡に役立つはずです。
- 人に感染しますか?
FIVが人に感染することはありません。
人にはヒト免疫不全ウイルス(HIV)がありますが全く別のウイルスです。
- 散歩中飼い犬が猫に噛まれました。FIVは感染しますか?
犬や他の動物に感染することもありません。
ツシマヤマネコが感染した例はあります。
- FIVキャリア猫を触ったら家の飼い猫に感染しますか?
感染しません。
FIVの感染力は弱く、人の手を介して感染することはありません。
ウイルスは弱く、手洗い、アルコール消毒、次亜塩素酸水消毒などで消毒できます。
- FIVキャリア猫は長生きできますか?
それなりに長生きします。
FIVは症状が出てくるまでに長いキャリア期があります。
約10年程のキャリア期のあと症状が出ますが、投薬で症状をコントロールできます。
すごく長生きはできないかもしれませんが、10年以上一緒に暮らせる可能性は十分あります。
- FIVキャリア猫が長生きするにはどうしたらいいですか?
猫にストレスを与えてしまうと免疫力が低下します。
なるべく穏やかにストレスのない生活が望ましいです。
そうすることで、症状のないキャリア期を長くすることができます。
- FIVの感染経路はなんですか?
主な感染経路は激しいケンカによる咬み傷です。
野良猫の中でも、縄張り争いの多い未去勢のオス猫が感染率が高いです。
野良猫でも去勢手術してあると穏やかな性格になり、FIVに感染しづらくなります。
母子感染はありますが、少ないです。
- FIVに効果のあるワクチンはありますか?
ワクチンはありますが、効果は限定的と考えられています。
FIVはいくつかサブタイプがあるため、今のところ全てのサブタイプに効果のあるワクチンはありません。
キャリアではない猫を、FIVキャリア猫と直接接触させないことが最も予防効果があります。
- FIVはいつ発見されましたか?
FIVは1986年に発見されました。
1964年に発見された猫白血病ウイルス(FeLV)に比べて新しいウイルスです。
発見されるまでは原因不明の免疫不全とされていました。
- FIVは優秀なウイルス?
FIVは長い間発症せず、猫の体に残ります。
体から排除することも難しいです。
外猫であれば、激しいケンカなどで感染を少しずつ広げていきます。
ゆっくりと感染を広げる優秀なウイルスといえます。
- 猫同士が舐め合ったら感染しますか?
FIVは猫の唾液中に存在していますが、舐め合っただけでは感染の可能性は低いです。
主な感染経路は激しいケンカによる咬傷です。
しかしFIVキャリア猫とそうでない猫は隔離して飼育することをおすすめします。
- FIVは母子感染しますか?
母子感染は少ないですが、あります。
同じ母猫から生まれても、FIVに感染している仔猫とそうでない仔猫がいる場合もあります。
- FIVはどのような検査をしますか?
血液中にFIVに対する免疫(抗体)があるかの検査をします。
猫の腕などから注射針で血液を少量採取し、検査キットに垂らします。
FIVに対する免疫があればFIVも体に存在することがわかります。
- 猫を保護した直後のFIVの検査は正確ですか?
正確ではないこともあります。
FIVの検査はFIVに対する免疫(抗体)があるかの検査をしています。
FIV感染があってから免疫はすぐにはできず、2ヶ月ほどかかります。
そのため、保護してから2ヶ月経った検査の方がより正確です。
- 仔猫のFIV抗体検査では偽陽性がでますか?
生後6ヶ月以下の仔猫では偽陽性が出ることがあります。
仔猫は母猫の初乳から免疫をもらいます。
FIVキャリアの母猫の初乳には免疫が含まれるため、仔猫も偽陽性が出ることがあります。
偽陽性の場合は生後6ヶ月くらいで陰性に変わります。
偽陽性か陽性か判定するためにプロウイルス遺伝子検査をすることがあります。
- 免疫不全ってなんですか?
免疫不全とは正常に免疫が機能していないということです。
体はさまざまな病原体やがんを抑えるために、強い免疫力をもっています。
この免疫力が低下すると、普通ではかからない感染症やがんにかかってしまいます。
- どんな猫が感染しやすいですか?
室内飼いをしていない去勢をしていないオス猫が多いです。
去勢をしていないオス猫は頻繁に縄張り争いをします。
血の出る激しいケンカを繰り返すためFIV感染率が高くなります。
- エイズってなんですか?
FIVが感染すると、急性期、無症状キャリア期、エイズ関連症候群、エイズ期、のステージがあります。
個体差はありますが、発症するまでに10年程度かかります。
エイズとは「後天性免疫不全症候群」の略で、一番最後のステージのことです。
FIVキャリア猫は発症していないため、エイズ猫と呼ぶことは正確ではありません。
- エイズ期の猫の症状はなんですか?
FIVが感染すると、急性期、無症状キャリア期、エイズ関連症候群、エイズ期、のステージを経て発症します。
個体差はありますが、発症するまでに10年程度かかります。
エイズ期の猫の特徴には、激しい削痩と貧血、白血球減少、日和見感染、悪性腫瘍などがあります。
- ライオンにFIVは感染しますか?
ライオンにFIV感染はするけど、症状は示さないようです。
FIVの抗体検査が陽性のライオンがみつかっています。
またライオンに特有のFIVに似たウイルスもいますが、病原性はほとんどないそうです。
- FIVの感染率が高い地域はどこですか?
猫の密度が関係するようです。
日本の猫のFIV感染率は全国平均12%程度で、5%以下のアメリカやカナダと比べると高くなっています。
特に首都圏では感染率が高く、猫の縄張りのオーバーラップがケンカの原因となり感染を増加させています。
野良猫もTNR(不妊手術)することによって縄張り意識を下げて、FIVの感染リスクを少なくできます。
FIVキャリア猫についてのこのメンバーの中での認識統一になります↓
すべてスタッフの方が確実に伝えられる内容として、主な感染経路は咬み傷による感染、に統一しましょう。