TNRモデルケースをご紹介①

稲垣将治
獣医師
猫の問題を減らすために日々奮闘
2014年野良猫の不妊手術専門病院開業
2019年保護猫カフェさくら開業

ご近所に困ったエサやりさんはいませんか?

のら猫の問題を減らすためには、不妊去勢手術を進めることが最も重要となります。

そのためには、猫にエサを与えているエサやりさんの協力が不可欠です。

どうやってエサやりさんと話し合いをすればいいのか?

のら猫の不妊手術を進めるにはどうしたらいいのか?

分からない方も多いと思います。

今回は、TNRに成功した事例の中から、エサやりさんとの実際のやり取りや話し合いをご紹介します。

モデルケース①は、最初は警戒心を抱いていたエサやりさんが、話し合いを続けていくうちに打ち解けて、協力的になってくれた話です。

このモデルケースから気づいたことも、あわせてご紹介します。

今後もモデルケースをいくつかご紹介していく予定です。

なぜ、のら猫の不妊手術が必要なのか、知りたい方はこちらの記事を参考にして下さい。

目次

モデルケース① 近所で仔猫を発見して、TNRを完了できた

最初に、猫の味方Aさん(以後Aさん)が、自宅近所で仔猫を発見しました。

仔猫は猫風邪のようで、状態が悪そうに見えました。

猫の味方Aさん

どうやらエサを与えているのはご近所のBさんのようです。

Bさんは、長年同じ家に住んでいる高齢の女性です。

まずはAさんは手紙を書いて、Bさんのポストに投函しました。

「TNRというやり方があるので、協力して猫の問題を減らしませんか?」という内容です。

手紙に書いた電話番号に、すぐに返事がありました!

Bさん

実は、仔猫が生まれてしまい、困っていました。

やはり、Bさんご本人も猫のことで困っているようでした。

直接、Bさんのお宅へ行って猫の様子などを確認しに行きましたところ…。

Bさんはとっても不機嫌な様子で、Aさんを信用していない様子でした。

それでもAさんは、不妊手術のメリットのBさんに熱心に説明しました。

しかし、お返事は…。

Bさん

不妊手術はしてもいいけど、手術費用は出すことはできません!

猫の味方Aさん

またこのパターンか…。
信頼関係を作っていけたら、費用も後に出してくれるかも。

猫の味方Aさん

私はお金はいりませんので、とにかく早く治療をした方がいいですよ。
放置すれば、猫の問題は大きくなるばかりです。

と伝えて、AさんとBさんは一緒に、猫の捕獲(TNR)をすることになりました。

Bさん宅にはお庭があり、縁側には猫の親子が数匹いました。

全体的に状態が悪く、感染症もありそうです。

猫の味方Aさん

全部の猫がひどい猫風邪。
目がぐちゃぐちゃだ…。

すでに状態が悪化し過ぎていたようで、1匹の子猫は保護してすぐに亡くなりました。

それでも、毎日のようにBさん宅へ通いながら話し合いを続けました。

すると通っているうちに、最初は不信感のある表情をしていたBさんとも、少しずつ打ちとけてきました。

本当に少しずつ少しずつ…。

手術には自治体が支給する助成金を使いましたが、その他の医療費など含めて5万円程度かかりました。

猫の状態が悪ければ、治療をするための費用がかかることがあります。

Bさん宅へ来る猫のすべての手術と治療がなんとか終わり、Aさんは最後のあいさつに向かいました。

猫の味方Aさん

おかげさまで、すべての猫ちゃんの手術が終了しました。

Bさん

これまでありがとうございました。
医療費はすべてお支払いさせて下さい。
良かったら、このタオルも保護猫たちにお使い下さい。

なんと、お礼の言葉と共に医療費全額とタオルの寄付まであったのです。

その後も、Bさん宅に新しい猫が来ても、とても協力的に猫の捕獲をして、猫たちの生活を見守ってくれています。

モデルケース①からわかったこと

エサやりさんは高齢者のことも多く、のら猫の不妊手術に無理解なことが多いです。

今回も高齢の女性がエサやりさんでした。

モデルケース①から感じたことを、いくつかご紹介します。

ファーストコンタクトに細心の注意を払う必要がある。

ファーストコンタクトでエサやりさんとどのようにコミュニケーションをはかるかで、協力体制を作れるか決まってきます。

あなたエサやりしてますよね?

このような聞き方では、エサやりさんに壁を作られてしまいます。

のら猫にエサを与えていることに、後ろめたさを感じている人もいます。

エサやりさんの心に土足で踏み込めば、信頼してもらうことはできません。

もしかして猫ちゃんにご飯をあげて下さっているんですか?猫ってかわいいですよね!

まずは、猫にエサを与えてもらっていることに感謝の気持ちを伝えると、その後の反応が良くなると思います。

誰だって、初めて会った人から悪者あつかいされたら、反発したくなりますよね?

あなたを責めるつもりはなく、できるお手伝いを探す味方であることを伝えましょう。

エサやりさんの話を聞き、寄りそう姿勢

自宅にいる時間の長い高齢者が、庭や近所の公園でエサやりをしていることも多いです。

高齢者はのら猫の不妊手術に無理解なことも多く、伝え方を間違えると手術が進まなくなります。

よく知らないことを実行するのは、誰だって怖いものです。

ましてや、のら猫を捕まえて手術するなんて未知の世界です。

高齢のエサやりさんの説得のやり方には、ポイントがあります。

  • 困っていることがないか聞いてみる
  • ご近所さんとトラブルが起きていないか聞いてみる
  • 最初にお金の話はしない
  • やってあげるのではなく、一緒に頑張るという姿勢

エサやりさんは、猫に関連するなにかしらのトラブルを抱えています。

  • エサを与えたことで、予想以上に猫が増えて困っている。
  • 猫が増えたことで、餌代が増えた。
  • 高齢のため、今後も猫の世話を続けられるか心配。
  • 猫が原因でご近所とトラブルになっている。
  • 不妊手術はしたいけれど、高額な費用負担は難しい。
  • 不妊手術はしたいけれど、猫を捕まえることができない。

これらのトラブルを抱えていないか、困っていることがないか、なるべく優しく聞いてみましょう。

猫に対する思い入れが強いエサやりさんほど、猫の長話が始まる可能性があります。

最初は我慢して聞き、エサやりさんと信頼関係を作って下さい。

お金の話を最初からしてしまうと、警戒されてしまいます。

猫の話やトラブルがないかよく聞いてから、手術費用についての話を始めた方が安全です。

また、近年ではのら猫の手術を安価でしてくれる病院があることや、自治体の助成金制度なども充実してきていることを伝えると、安心してもらいやすいです。

猫を捕まえるやり方を知らない場合は、捕獲器をレンタルできる施設を紹介したり、捕獲器の使い方を教えてあげましょう。

猫のトラブルを減らすために、どんなお手伝いを必要としているか? エサやりさんに聞いてみましょう。

まとめ

エサやりさんは猫にエサを与えることで、トラブルを抱えていることが多いです。

また、後ろめたさを感じていることもあります。

そういった方に、

「手術もしないでエサを与えているからいけないんだ!」

と伝えるのは、得策ではありません。

エサやりさんの気持ちになって、どんなことで困っているのか、お手伝いできることは何か?を聞くことで、少しずつ協力体制を作れるはずです。

猫の問題を作り出しているのは人です。

人とのつながりを大切にしながら、のら猫の問題を減らす方法を探していきましょう!

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